◆第5回日本中医学交流会大会大会長挨拶

高橋秀実

(日本医科大学微生物学免疫学教室教授, 日本医科大学付属病院東洋医学科部長)

高橋秀実 日本医科大学微生物学免疫学教室教授

この度、日本中医学交流会 第5回大会の会長を務めさせていただくことになりましたので、一言ご挨拶を申し述べさせて戴きます。

私は現在日本医科大学医学部の微生物学免疫学講座で、様々な病原微生物の実体とそれらが引き起こす感染症の病態、及びこうした病原体を迎え撃つ私たちの身体の中に内在する防御システムの研究・教育を担うとともに、日本医科大学付属病院東洋医学科の部長を担当致しております。

私と中医学との出会いは古く、今から25年以上前当時大学院の学生であった私自身が経験した40度を越える高熱を伴う不明熱病態が温病学の方剤によって治癒したことに端を発します。明代・清代に発展を遂げた温病学に対する知識や関心は、本場中国に比較しこの日本では今一つと言った感じですが、その考え方や治療法は様々な感染症を始めアレルギー疾患や膠原病を含む各種の難病、あるいは癌にまで応用可能です。

現在、新型インフルエンザの脅威が叫ばれておりますが、本大会では午前中のシンポジウムとして「感染症と免疫:温病治療によるSARSの征圧」のテーマを掲げ、数年前に世界中を震撼させたウイルス感染症であるSARS(重症急性呼吸器症候群)を取り上げてみることにしました。このシンポジウムでは、SARSの第一人者である国立感染症研究所感染症情報センター長、岡部信彦先生よりその実体をご説明戴いた後、SARSが蔓延した広東省の広州中医薬大学第2附属病院で多くのSARS患者を温病の治療法によって救った林琳教授(呼吸器科主任)より症例呈示ならびにその具体的な治療内容についてご説明戴きます。そして、最後にこうしたウイルス疾患に対する温病治療の意義について現代免疫学的な解釈を含め高橋から解説を加えてみたいと思います。
午後には、これら感染症に対する治療法を「傷寒症と温病」に大別して概説を加えてみるとともに、その診断法としての「六経弁証と衛気営血弁証」の差異を論じ、「舌診の意義」を考えてみたいと思います。午後の鍼灸分科会では、明治鍼灸大学の篠原昭二先生を中心に「鍼灸と免疫」について討論していただくとともに、アメリカからアメリカ医師鍼灸学会の中澤弘先生をお招きして「最新のアメリカ鍼灸事情」をお話しいただきます。また談話室では鍼灸の公開実技を行います。
本大会を通して、様々な疾病に対する湯液治療と針灸治療の有効性応用性が再認識され、その根底に流れる中医学の考え方に多くの人々が関心を持たれるようになり、現代西洋医学と融合することによって新たな日本の医療が始まることを強く願う次第です。

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